春に訪れたい島田市・川根エリアの桜スポット9選♪「かわね桜まつり」や桜を守る人々の思いとは
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静岡県内でも有数の桜スポットを有する島田市。中でも川根エリアには、1931年に県道(現国道)と大井川鐵道(てつどう)の全線開通を記念して桜が植樹され、樹齢90年以上を誇る桜の名所が多数存在します。桜の開花時期に合わせて、3月下旬から4月上旬にかけて「かわね桜まつり」も開催!春爛漫(はるらんまん)の景色を彩る美しい桜と、それらを後世まで受け継ぐための活動について、地元の方々にお話を伺いました。
目次
4.「かわね桜まつり」を川根全体で盛り上げたい!ふるさとの再興に奔走
1.最新!桜の開花状況
2.ここは外せない!島田市内の桜スポット9選
大井川鐵道・家山駅から線路沿いに南下すると、樹齢90余年のソメイヨシノが約1キロメートルにわたって桜並木を成しています。中でも、途中に現れる中央分離帯では道の両側に桜が咲き誇り、300メートルほどのトンネルのように見えることから「桜トンネル」の愛称で親しまれています。桜と側を走るSLのコラボを写真に収めようと、多くの人がカメラを構える場所でもあります。
家山駅から徒歩10分。家山川に沿うようにして、家山川緑地公園の前に200メートルほどにわたって桜並木が続きます。約250本のソメイヨシノが咲き誇り、「桜トンネル」に対して「新桜トンネル」と呼ばれています。2024年3月23日(土)~4月7日(日)の期間中は、18:00~21:00にライトアップも実施します。
家山川緑地公園から徒歩5分ほど北上すると、「野守の池のしだれ桜」の姿が見られます。池は外周約1.2キロで、200~300本ものシダレザクラが池の周りで花を咲かせます。
➡︎野守の池の詳細はこちら(島田市観光協会HP内)
野守の池から5分ほど歩くと、小高い山の上に「天王山公園」があり、ソメイヨシノが100本ほど咲き誇っています。ここからは「桜トンネル」「新桜トンネル」「野守の池のしだれ桜」を見渡すことができ、散歩コースとしても人気のスポットです。
「桜トンネル」「新桜トンネル」「野守の池のしだれ桜」「天王山公園」は歩いて回ることができる距離にあります。この時期に増便される大井川鐵道を利用する人や、家山川の河川敷には約200台が停められる無料駐車場があるので、自家用車で訪れる人もいるそう。ただし、昨年の台風15号の影響で国道473号線が一部通行止めになっているため、川根方面へは大井川の左岸、県道64号線「島田川根線」を通るか、公共交通機関の利用がおすすめです。特に土日は道が混雑するため、時間に余裕をもって行動しましょう。
“茶畑の中に1本の桜が佇んでいる”とSNSなどで話題の「牛代(うしんしろ)のみずめ桜」。樹齢300年を超えるエドヒガンザクラで、市指定天然記念物にも指定されています。2024年3月23日(土)~4月7日(日)の期間中は、18:30~20:45にライトアップも実施。みずめ桜から徒歩5分ほどの場所に茶工場があり、30台ほど停められる駐車場が利用可能です。桜の時期になると案内の看板が出ているので、それを目印に訪れて。個人所有の桜で、私有地の立ち入りは禁止されていますが、撮影可能な場所もあるので、詳細はHPで確認を。
川根町笹間地区にある久円寺(きゅうえんじ)境内に咲く「寿永(じゅえい)の桜」。市指定天然記念物に指定されたシダレザクラで、なんと樹齢800年以上と言われている貴重な存在です。開花すると、日没から20:30までライトアップも実施。50メートルほど離れた場所に集会場があり、2、3台停められる駐車場を利用できます。
島田市役所の敷地内に咲く早咲きの一本桜は「帯桜」の名称で知られ、品種不明の希少な桜だと言われています。帯桜は市内各所に植樹されているので、巡ってみるのもいいですね。
島田市博物館の裏手にある旧堤防沿いにも、約1キロにわたる道路の両サイドに300本近くもソメイヨシノが咲き誇り、「河原町堤防の桜並木」として知られます。その様子は「桜トンネル」にも引けを取らないほど美しいのだとか。町内会によって提灯が飾りつけられ、桜まつりが行われる予定。大井川河川敷の駐車場から、徒歩2、3分でアクセスできます。
➡︎河原町堤防の桜並木の詳細はこちら(島田市観光協会HP内)
JR六合駅の近くを流れる大津谷川(おおつやがわ)。川の両岸に2、3キロにわたって約700本もの桜の木が並ぶ様子を眺めながら、およそ30分間のウォーキングを楽しむことができます。時には周囲が桜吹雪に包まれることもあるそうで、幻想的な花見を楽しむことができるかも。3月下旬からの約2週間は夜になると提灯がともり、昼間とは異なる雰囲気の夜桜が演出されます。
※提灯は部分的な点灯となる、もしくは開催が見送られる可能性もあります。詳細はHPで確認を
いずれのスポットも、例年開花は3月20日前後。天候によりますが、3月26日・27日あたりに
満開になることが多いそう。満開を迎えてからは1週間ほど美しい桜が見られますが、年によって見ごろが変動します。島田市観光協会のHPでは、各スポットの桜の開花状況を随時更新しているので、ぜひチェックしてから訪れて。
桜の観光シーズンの3月下旬~4月上旬にかけては、例年「かわね桜まつり」を開催。2024年3月23日(土)~4月7日(日)に実施予定で、家山駅前や家山川緑地公園では川根茶の無料接待があるほか、「桜トンネル」からすぐの「さくら茶屋」駐車場では川根茶や野菜など特産物を販売、家山駅すぐの「家山の足湯(※)」では、ボランティア団体「川根おもてなし人クラブ」による観光案内所が設けられる予定です。
※現在足湯のサービスは行っておりません
また、マラソン大会「かわね桜まつり走ろう会」も開催。ほかにもイベントを企画しているそう。各イベントの詳細や開催日時はHPで確認を。
桜の開花状況の把握や、「かわね桜まつり」の運営を10年以上担当している島田市観光協会の伊藤厚さんは、「かわね桜まつりは、桜を見に来てくださるお客さんの“おもてなし”です。昨年は新型コロナウイルスの影響で中止になってしまいましたが、今年は開催予定です。昨年より多くのお客さんに来ていただけたらうれしいです」と語ります。
一方で、特に家山地域に多いソメイヨシノが年々弱ってきていることに、不安を覚えているそう。
「桜トンネルなどは樹齢90年以上になり、病気にかかったり、痛みが激しかったりします。桜の保護は技術的にも金銭的にも大変ですが、1年でも長く桜が咲いてくれるように、みんなで守っていきたいです」。
桜は品種によって寿命が異なります。長い間人々に春の訪れを知らせてきた島田市の美しい桜並木も、時間の流れとともに少しずつ元気を失ってきています。この状況をなんとかしようと、桜のためにさまざまな活動に取り組む島田市の皆さんに、お話を伺いました。
3.思い出の桜を守りたい「川根の桜を守る会」
名古屋市の会社で定年まで働き、約20年前に地元・川根に戻ってこられた現在79歳の藁科博(わらしな ひろし)さん。以前は帰省するたびに桜の美しさに魅了されていましたが、ここ数年、目に見えて桜が傷み始めたことに危機感を覚えたそう。
「もともと川根の空気がきれいなことや、桜の根本が比較的守られていたことなど、良い条件が重なって今日まで川根の桜が保たれてきました。でも川根の大半の桜はソメイヨシノで、その一般的な寿命は70~80年、手入れが良ければ100年を超えることもあると言われています。さすがにここ数年は、人の手で助けないと厳しい状況になってきた。そこで私と同じようにリタイアした地元の旧友たちに声をかけて、ふるさとを守る取り組みの一つとして桜の保護を始めたんです」。
藁科さんによって結成された「川根の桜を守る会」は、2024年で6年目を迎え、現在は17人のメンバーで活動中。樹木医などの専門家を現地に招いての勉強会を通し、病気の見分け方や枝の切り方、消毒の仕方など専門的な知識と技術を身に付け、桜を保護する活動をボランティアで続けています。「保護は体力のいる作業です。平均70歳前後、リタイアした中高年のおじいさん達で頑張ってやっているので、何よりも安全第一ですね」と笑顔の藁科さん。活動は1シーズンに6回ほど、12月~3月頭にかけて行われます。一回につき軽トラック4~5杯分ほどの枯れ木や病気の木を処分し、その数は4年間でのべ軽トラック150杯分ほどにも上るそう。
幼いころから、大井川や家山川、野守の池など、自然の中での“遊び”に親しんできたという藁科さん。川根の桜の“美しさ”には大人になってから気づいたと笑みをこぼしながらも、「子どものころから、卒業式や入学式、ひな祭り(当時は4月3日)など、大切な思い出のそばにはいつも桜があった気がします。地元にそういった桜の名所があることは喜ばしいことですね」としみじみと語ってくださいました。
「桜の寿命と人間の寿命はほとんど同じ。幼少期、青年期、壮年期、熟年期など、成熟の過程も人間と同じです。過保護にしてもいけない、放っておいてもいけない……子育てみたいなものだと感じています(笑)。少しでも手助けができるように、一生懸命頑張っています。この春は『かわね桜まつり』もありますし、あたたかくて良い春になればうれしいですね」。
4.「かわね桜まつり」を川根全体で盛り上げたい!ふるさとの再興に奔走
「私が子どもだった昭和の時代には、『かわね桜まつり』には露店がたくさん出ていて、2週間ほどずっとにぎやかで楽しかった思い出があります。観光バスも何台も来ていて、とても活気がある祭りでしたね。大学進学で東京へ出て、就職してから静岡県焼津市に住んでいましたが、帰省して川根の桜を見るたびにテンションが上がって、“この地域に生まれてよかった”と感じていました」。
川根出身で現在45歳の諸田泰宏(もろた やすひろ)さん。10年ほど前に川根に戻ってこられました。「NPOまちづくり川根の会」の企画部会長を担当され、2024年の「かわね桜まつり」を一層盛り上げようと、奮闘されています。
諸田さんが所属されている「NPOまちづくり川根の会」は、これまでにも「かわね桜まつり走ろう会」の手伝いなどを通して「かわね桜まつり」に関わっていました。その活動を通して、より地域が一丸となって観光事業に取り組む必要性を感じたそう。
「川根は過疎地域です。地元の再興のためにも、“桜の町・川根”として、観光の面をみんなで考え直さないといけないと感じています。今までも桜関連のイベントはいろいろ実施されてきましたが、その主催者はバラバラに活動していることが多いです。地元のみんなで協力して取り組めば、より良いアイデアが出てくると思いますし、“また訪れたい”と思っていただけるような、リピートしたくなる町になると思っています」。
「90年以上前に先祖が植えてくれた桜を大切にしたい」という熱い思いを持った諸田さん。仲間に声をかけ、まずは今ある催しを地元住民で協力して「かわね桜まつり」としてアピールしていけるよう、話し合いの場を作るなど、川根町でのコミュニケーションを促す役割を担っておられます。
「川根では、桜の時期になると大井川に80匹以上ものこいのぼりを飾るんですが、これは一時期途絶えてしまっていたので、私たちで協力して4、5年ほど前に復活させました。これも『かわね桜まつり』の一環です。『かわね桜まつり』を全国に広くアピールしていくために、今は準備を進めています」。
このほか、「NPOまちづくり川根の会」では桜の保全を行う「桜の郷づくり構想プロジェクト」も実施中。いくつかある桜の保護団体が互いにより協力して桜を守っていくために、活動を統括する役割を果たそうと、保全活動や話し合いを行っているそう。桜を守り、観光事業を活性化することを通して川根の明るい未来を創るため、諸田さんは裏から“桜の町川根”を支えるべく、今日も活動されています。
5.「額縁の世界」の美しさに会いに来てほしい
「大井川鐡道が全線開通した1931(昭和6)年に植えられたという『桜トンネル』。その桜トンネルに煙をたなびかせて走るSLは、まるで“額縁の世界”のように美しく、思わず切り取っておきたいくらいなんです」。こう語るのは、「川根おもてなし人クラブ」の会長を務める森下文子(もりした ふみこ)さん。島田市役所や島田市観光協会、市内の店舗などで配布されている、家山の観光スポットをまとめた「家山桜マップ」を手作りされた方です。
もともと静岡市の出身で、21歳の時に川根に嫁いでこられた森下さん。会社に勤めながらも、川根の自然や四季折なす風景の美しさに、観光案内をする「川根おもてなし人クラブ」の存在を知って、メンバーになったそう。
「6年ほど前ですかね、前会長より受け継いで、私が会長をすることになったんです。川根の良さを伝える活動がしたくて、町のイベントをお手伝いしたり、桜の時期には家山駅前に観光案内所を開いて、依頼があれば桜の名所や川根の観光スポットをご案内する活動も行っています。現在19人の会員がいて、特に『かわね桜まつり』の時期は会員総出で活動しています」。
「家山桜マップ」を手作りしたのも、この観光案内所がきっかけ。
「ある日観光案内所に来られたお客様が、地図を持って桜についての質問をしてくださったんですけど、その地図が分かりづらくて。せっかくなら、私たち会員もご案内がしやすいマップを作りたいと思い、色鉛筆を使って手書きのマップを作成しました」。
マップには、桜トンネルをはじめとする名所はもちろん、家山駅からの所要時間や近隣の飲食店などの情報も細かく記載されています。作成した最初の年には、手書きのマップという面白さが人々の心に響いたのか、約2,000枚があっという間に配布されるなど、現在まで多くの人に活用されています。
「かわね桜祭り」では、町内の飲食店などと協力して、ワンコインで購入できるお土産や弁当を企画・販売する取り組みも実施しました。
「サイズは大きくなくても、気軽に購入していただきたい、そんな思いを込めています。お弁当には、川根の郷土食である“落花生の煮豆”を入れてもらうのが一番のこだわりです。川根ではおもてなしの時に各家庭で出される郷土食で、初めて食べた時そのおいしさに感動したので、川根を訪れてくださるお客様にも召し上がっていただきたくて」。
川根の桜には、それぞれに異なる良さがあるという森下さん。ここ数年は桜の傷みが心配されていますが、「寿命が60年と言われている『桜トンネル』のソメイヨシノは、およそ90年を超えて咲き続けている素晴らしい桜です。“もしかしたら来年は会えないかもしれない”。そんな思いで桜に会いに来ていただけると、また感じ方が違ってくるのではないでしょうか」。
森下さん率いる「川根おもてなし人クラブ」では、川根に新たな観光資源を作りたいと、ユニークな活動にも取り組まれています。
「長距離を移動することで知られ、全国にファンがいる『アサギマダラ』というステンドグラスのような美しい蝶がいるのですが、以前からこの蝶に興味を持っていました。SLとアサギマダラが秋の観光資源になればと思い、大井川鐵道の社長さんにお話したところ快諾をいただいて、大井川鐵道さんと協力して取り組むことになったんです。線路沿いに花壇を作って、アサギマダラの好む『藤袴(ふじばかま)』を植えさせていただきました」。
森下さんが仲間と活動を始めてから4年、アサギマダラが飛来するようになり、SLと合わせて秋の観光資源になりつつあります。
「春はSLと桜、秋にはSLと優雅に舞うアサギマダラに会いに来て、川根の魅力を感じていただきたいですね」。
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