築城450周年記念!天下人・徳川家康がほれ込んだ戦いの城「諏訪原城(牧野城)」の歴史と見所を解説

築城450周年記念!天下人・徳川家康がほれ込んだ戦いの城「諏訪原城(牧野城)」の歴史と見所を解説

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日本の歴史を語る上で欠かせない戦国大名・徳川家康。2023年1月8日から、NHKの大河ドラマ「どうする家康」の放送が始まり、戦乱の世に天下統一を果たした家康の物語に再び注目が集まっています。静岡県島田市には、天正元年(1573)に武田勝頼(かつより)が築城し、天正3年(1575)に家康によって攻め落とされた「諏訪原城跡(すわはらじょうあと)」があり、日本最大級の「丸馬出(まるうまだし)」と呼ばれる城の防御施設をはじめ、当時の激しい戦いの様子を彷彿とさせる景色が今も色濃く残っています。築城から450周年を迎える2023年、島田市博物館課に所属する学芸員の岩﨑さんに諏訪原城の歴史と魅力について伺いました。

目次

1.諏訪原城の歴史

2.日本最大級の「丸馬出」が見所!絶景スポットも

3.「諏訪原城ビジターセンター」で理解を深めよう!

4.城マニア必見!御城印や人気グッズを紹介

諏訪原城の歴史

静岡県島田市金谷(かなや)の地に、戦国時代の歴史と文化が薫る城跡があるのをご存知ですか?その名も「諏訪原城」と呼ばれる山城で、戦国最強の武将・武田信玄の息子、武田勝頼と徳川家康の国取りの舞台となった城です。

1975年には国指定の文化財(史跡)に、2017年には公益財団法人「日本城郭協会」から「続日本100名城」に選定された歴史的価値の高い城として人気を博し、全国から城マニアが足を運びます。

諏訪原城が築城されたのは天正元年(1573)。駿河(※1)から徳川領の遠江(※2)へと侵攻を試みた武田勝頼が、家臣の馬場(美濃守)信春に命じて、駿遠の国境に遠江侵攻の拠点として築き上げました。城内に戦の神、勝利の神として多くの武将の信仰を受けてきた「諏訪大明神」を祭ったことから諏訪原城と名付けられ、現在も「諏訪神社」が城内に残っています。

※1……するが。現在の静岡県中部。
※2……とおとうみ。現在の静岡県の大井川以西。

島田市博物館課に所属し、島田市内の歴史・文化財の調査、研究に勤しむ学芸員の岩﨑さんは、諏訪原城を「戦をする上でまたとない条件がそろった城」と位置付けます。

城郭復元イラストの第一人者・香川元太郎先生作画の諏訪原城跡推定復元図

岩﨑さん「諏訪原城は牧之原台地の先端に位置することで、大手(表側)は平坦ですが、本曲輪東側が断崖絶壁で、当時、城の眼下を大井川が流れる典型的な“後ろ堅固”の城でした。また主要幹線・東海道が城域内を通過し、東西交通の要衝の地であったこと、高台にあり、東海道や大井川から攻め入る敵の動向を把握しやすかったこと、駿河と遠江の国境地点に位置していたことなど、多数の地の利に徳川家康は目をつけたと思います」。

徳川家康は、天正3年(1575)の「長篠の合戦」と同じ年に諏訪原城を奪取。間もなく「牧野城(まきのじょう)」として改修しました。島田市が2009年~2015年に実施した発掘調査によると、現在残る遺構の多くは徳川家康によって改修された可能性が高いと言われています。

日本最大級の「丸馬出」が見所!絶景スポットも

諏訪原城は「武田流築城術」が顕著に表れた城で、城の中核を守るために配置された堀や曲輪(※3)など、戦国時代の山城の特徴が多く見られます。

中でも最大の特徴といえば、城内に3カ所残る「丸馬出」。丸馬出とは、敵に狙われやすい城の弱点・虎口(※4)の前に設けられた防御設備のことです。三日月掘と曲輪がセットになった空間を指し、曲輪の外側に三日月形の空堀を掘ることで敵が真正面から侵入するのを防ぎ、敵の突破力を弱める目的で造られました。さらに、味方が出撃する際の拠点にもなる場所で、武田流築城術に見られる造りです。

※3……くるわ。土塁や石垣で囲まれた平坦地。
※4……こぐち。城や曲輪への出入口。

諏訪原城応援隊イベント「諏訪原城ポイント解説会」にて(2022年10月9日開催)

岩﨑さん「一番の見所は、なんといっても城のシンボルにもなっている“二の曲輪中馬出”です。日本最大級の規模を誇り、来城した人はみなさん堀の大きさにびっくりされますね。ここまで当時の形に近い良好な状態で残っているのも珍しいです。整備が進み周りの木が伐採されているので、巨大な丸馬出をよく鑑賞できますよ」。

※通常は堀の中には入れません

「二の曲輪中馬出」と土橋でつながったところにある「二の曲輪北馬出」も注目のスポット。発掘調査で門に使われた礎石が確認されたことから、2017年に「薬医門」が復元されました。興味深いのが、扉を閉めた際にできる3センチほどの隙間。槍を持った敵兵が扉に迫った際に、この隙間に敵の槍を挟み込んでも、邪魔されることなく扉を閉めることができるのです。

岩﨑さん「天気が良ければ薬医門を額縁にして富士山を撮影することもできますよ。知る人ぞ知る隠れたフォトスポットです」。

高台の断崖上に位置する「本曲輪」も見所の一つ。大井川をはじめ、島田市や藤枝市の市街地が眼下に広がる絶景スポットで、改めて諏訪原城が「後ろ堅固」の城を絵に描いたような立地に建てられたことを実感できる場所です。こちらも天気が良ければ富士山が望めるので、諏訪原城に訪れた際は足を伸ばしてみては。

岩﨑さん「山城は険しい山道にあるところも多いですが、諏訪原城は整備が進んでいて、近所の方がふらっと散歩に訪れるくらい比較的ゆるやかな道のりです。1時間足らずで城を一周できるので、ぜひ山城初心者の方も気軽にお越しいただければと思います」。

左:片川乃里子さん(フリーアナウンサー)、中:春風亭昇太師匠、右:加藤理文さん(日本城郭協会理事)

島田市では、静岡県出身の落語家でお城愛好家の春風亭昇太師匠を隊長に任命した「諏訪原城応援隊」を2020年に結成。諏訪原城跡の魅力を再発見できるトークショーやポイントツアーなどを開催しています。軽快なトークで歴史に詳しくない人でも楽しめること間違いなし!開催情報は、諏訪原城の公式Instagram(@suwaharajo.shimada)または島田市の公式HPで配信されます。

また、「島田市博物館」の公式YouTubeチャンネルでは、「諏訪原城応援隊」から寄せられた「築城450周年記念コメント」を紹介しています。ぜひそちらもチェックしてみてください。

【関連動画】諏訪原城応援隊から築城450周年記念コメントをお届け!(島田市博物館公式YouTubeチャンネルより)

「諏訪原城ビジターセンター」で理解を深めよう!

諏訪原城跡に訪れたら、合わせて立ち寄りたいのが「諏訪原城ビジターセンター」。諏訪原城跡の第一駐車場に隣接する、諏訪原城の歴史や構造に関する資料を展示する入場無料の施設です。

中でも島田工業高校の学生が作成した諏訪原城のジオラマは、リアルな造りに足を止める人も多い作品。武田流築城術が見事に再現されているほか、当時の徳川・武田の攻防戦をイメージした兵士たちのフィギュアが並び、激しい戦いの様子が伺えます。ラグビーボールを持った兵士など、所々に生徒の遊び心が散りばめられているので、じっくり観察してみては。

岩﨑さん「諏訪原城には、武田軍が徳川軍に攻め入れられた際に、武田軍自ら城の一部に火を付け逃げたという逸話があり、それを裏付けるように本曲輪付近からは焼けた土や炭化米などが出土しています。このほか、諏訪原城ビジターセンターには発掘調査により出土した陶器や古銭、鉄砲玉なども展示されていて、見所満点です」。

城マニア必見!御城印や人気グッズを紹介

諏訪原城跡を訪れた記念にゲットしたいのが御城印(書き置き・1枚300円)。まずはセンター内にあるカプセルトイで引換券を購入し、受付で御城印と交換してもらいます。

岩﨑さん「御城印には、上から武田家の「武田菱」・今川家の「赤鳥紋」・徳川家の「三葉葵」の3つの家紋があしらわれています。今川家の家紋が入っているのは、今川義元(よしもと)が永禄3年(1560)の「桶狭間の戦い」で敗れるまで、駿河・遠江・三河(現・静岡県東部〜愛知県東部)を治める戦国大名であったこと、また彼の息子である今川氏真(うじざね)が、家康から駿河侵攻の旗印として諏訪原城に迎え入れられるなど、今川家と縁が深いことに由来しています」。

限定デザインの御城印も要チェック!徳川家康が諏訪原城に入城し牧野城と呼ばれるようになった8月24日に特別販売されます。前回(2022年)の販売日には、ビジターセンターの開館前から行列ができるほどの人気ぶりだったそう。2023年も販売が予定されているので、最新情報は諏訪原城の公式Instagram(@suwaharajo.shimada)または島田市公式HPでチェックしてみてください。

諏訪原城グッズの購入も忘れずに。ビジターセンターでは、缶バッチやクリアファイル、2023 年1月に新発売されたハンドタオル(各種300円)など、普段使いできるアイテムがそろいます。岩﨑さんの一押しは、イラストレーター・香川元太郎先生が諏訪原城のために描き下ろしてくれたイラストが描かれた『丸馬出迷路クリアファイル』(300円)。香川元太郎先生のイラストを使用しているクリアファイルとハンドタオル以外のグッズは、「島田市博物館」でも購入できます。

諏訪原城築城から450周年を迎える2023年度には、450周年記念限定グッズの販売や、450年記念特別展を「島田市博物館」で開催する予定だそう。グッズやイベントの情報は諏訪原城の公式Instagram(@suwaharajo.shimada)または島田市公式HPで配信されます。

築城450周年という節目を迎え、大河ドラマ「どうする家康」の放送でますます注目が集まる諏訪原城。今後も目が離せません!

<施設情報>
諏訪原城ビジターセンター
住所:静岡県島田市菊川1174
営業時間:10:00〜16:00
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日)
備考:
諏訪原城跡、諏訪原城ビジターセンターともに入場無料。ビジターセンターには電話がないため、お問い合わせは島田市観光文化部博物館課文化財係(0547-36-7967)まで。

<関連情報>

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